ライティング

「小中理論」の3つのポイントで学ぶ怖いホラーの書き方

はじめに

ホラー、いいですよね。

人によって好き嫌いが比較的分かれるものの、今日に至るまで多くの作品が生み出されている人気ジャンルのひとつなのは疑いようがありません。

ところが、いざ書いてみようとすると、これがなかなか難しいものです。

私もホラーで満足いくものを書くのは毎回苦労します。

「ホラーを書いてみたいけど、コツがわからない……」

という経験をした方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はそんなときに助けになる

「小中理論」

について、重要な3つのポイントをお話ししようと思います。

小中理論とは何か?

脚本家・作家として活躍する小中千昭さんがまとめた、

「怖い作品を作る上でのべからず集」

です。

ご本人は理論という呼び方には思うところがあるようですが、非常に参考になるものなのは間違いありません。

本来は映像作品を想定したものですが、今回は映像以外でも使える部分をいくらか抽出してみます。

小中千昭さんについて

1961年生まれの脚本家・作家です。

1989年『邪願霊』でデビュー後、ホラー作品を数多く手がけ、後のJホラーと呼ばれる作品群のイディオローグ的存在となりました。

その活躍の場はホラー以外のジャンルでも発揮され、多くのアニメ・ドラマにも脚本を提供されています。

  • 『ウルトラマンティガ』
  • 『デジモンテイマーズ』
  • 『エア・ギア』

などの映像作品も手がけています。

小中理論の紹介

では、実際に小中理論を見ていきましょう。

本来の小中理論は様々な要素を含みますが、その中から3点をご紹介します。

恐怖とは段取りである

小中理論の中でも特に重要な部分です。

言い換えれば「恐怖を抱くまでには、段階的な情報を提示する必要がある」ということになります。

皆さんが書こうとしている作品の長さが短編以上であれば、物語は「起承転結」の構造を取ります。

このうち「起」と「承」、つまり物語の前半部分で「怪異」(恐怖するもの)への伏線を張る必要があります。

「置いてあったものの位置がずれている」

のように、ちょっとした奇妙さや違和感を出しておきましょう。

その積み重ねが受け手に「何が出てくるのだろう」という気持ちを与え、怖さにつながっていきます。

怖さとは怪異そのものではなく、怪異に出会うまでの全てにより生み出されるのです。

とはいえ、これは怪異と出会ってからを軽視していいということではありません。

きちんと起承転結の流れに沿って物語を終わらせる必要があります。

理由を語らない

怖い話のラストで、「実はそこでは昔自殺した人がいて~~」という話が入ることはよくあります。

しかし、小中理論では理由の説明はタブーです。

恐怖とは不条理(理屈では片づけられない)というのが小中理論の主張です。

「それなら怖いものが出てもしょうがない」というような納得を読者にさせないことを心がけましょう。

また、霊感のあるような人を出す場合も、同様に注意が必要です。

もちろん、彼らは状況説明や理解にうまく使えば効果的な存在です。

しかし、あくまで登場人物の一人として扱い、主役のようにならないように。

彼らが怪異について合理的な説明をしすぎないよう、気をつけましょう。

恐怖する人間の姿が恐怖を生み出す

受け手に恐怖を感じさせる一番の近道。

それは「登場人物の恐怖を感染させる」ことです。

ですがこれは「登場人物に感情移入させる」ことではありません。

大事なのはその人が確かに存在するかもしれないというリアリティです。

地名などをはっきりと示したり、細かい仕草や相槌など「現実ではあるが省かれがちなもの」をあえて盛り込むなどが有効な手段です。

また、安っぽい作品でありがちな「怪異と遭遇したとき悲鳴を上げる」といったものも、受け手に「作り物感」を与えてしまいます。

本当に怖いものに遭遇したとき、人は本当に悲鳴を上げるのでしょうか?

そこから見直してみるのも、怖さの表現には必要です。

終わりに

いかがだったでしょうか。

「小中理論」から3つのポイントを紹介しました。

今回はホラーの様々なジャンルに共通する点を抽出しましたが、より細かく小説や映像作品ごとのテクニックも小中さんの著書では紹介されています。

興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。

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GEM
我、路傍の石。 朝な夕なの暗がりに、ささめくことを夢む也。

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