こんにちは。ここではBlenderという3DCGソフトのお話をしようと思います。
最近はVRやARコンテンツ、それ以外にもイラストやゲーム制作などに3DCGを使おうという方が個人でも増えていますね。
3DCGソフトはいくつもありますが、その中でもBlenderは
- 無料で開始できる
- 世界中でオープンなコミュニティがあり教材が豊富である
- バージョンアップや機能の拡張が活発に図られ続けている
といった要素を兼ね備えており、初心者がまず手に取るにはお勧めのソフトです。
ここまで読んでなんか意識高い系っぽいなと抵抗を感じた方、大丈夫です。本ページでは、上記のような明確な理由も特になく趣味で3DCGを始めた筆者が、自身の経験をもとに初心者の方が覚えておくとよさそうな情報をまとめておきます。
本題はこっちです。何をやりたいかも特に決まっていないけどとりあえずBlenderやってみるかぐらいのノリで手を出した人間が、数年かかって理解した超基本の項目を並べて紹介しています。
個人的にBlenderを一言で表せばでっかい自由帳兼シミュレーターみたいなものです。私はしばらくの間何か思いついたときにさーっと筆を走らせてあれやこれやとこねくり回して楽しんでいました。そのときに基礎的な操作を覚えられたことが、いざキャラモデリングしたくなったときに非常に役立ったと感じています。
初めてソフトを使う初心者の方には、読んだけど訳が分からないという方もいらっしゃるかもしれません。ご指摘・質問お待ちしております。また、具体的なモチーフのモデリングについては次回以降の記事で触れる予定です。本記事は「3Dビュー内の移動方法」や「オブジェクトや頂点の選択方法」といった水準のお話が中心となります。
前置きはこれぐらいに。それではBlenderを始めるにあたって
①インターネットにつながったPC
②ディスプレイ
③キーボード
そしてできれば
④3ボタンマウス(左右クリックとスクロール操作ができるもの)
この4つの道具を用意してください。
Contents
1.インストール
とにもかくにもここからです。Blenderの公式サイトにアクセスしましょう。
最新版は2.79bです(2018年8月16日現在※)。また、筆者はwindowsの64bit版を使用していますが、ご自分の環境に合わせて適切なバージョンをダウンロードしてください。(windows10ではスタートメニュー→設定→システム→バージョン情報 を見ることで32bitか64bitかを確認できます)
なお、筆者はwiodows版以外の作業経験がほとんどないのでその他のOSを使用している方には適切な説明ができない可能性があります。ご容赦ください。
※執筆に2ヶ月もかけていたせいでver.2.8が目の前に迫り焦っております。(同年10月9日追記)
2.blenderを立ち上げる
インストール時にデスクトップにショートカットが作成されているかと思いますのでそちらをダブルクリックしてください。

ショートカットが見つからない・作らなかった場合…PC直下のフォルダ(C:)にあるProgram Files内にBlender Foundationというフォルダが作成されていると思います。この中にblender.exeというファイルがあるので実行してください。実行すると以下のウィンドウが表示されます。

なお、この真ん中に表示されているエージェントの画像もblenderによって製作されています。興味が湧いた方は是非YouTubeのblender公式チャンネルを見に行ってください。
→ https://www.youtube.com/user/BlenderFoundation
エージェントが主役のアニメ:https://www.youtube.com/watch?v=mN0zPOpADL4
さて、上記のウィンドウ内で適当な場所をクリックすると中央のエージェントや各種リンクが消え、以下の画面になります。

この画面内だけでも無数の要素があり、1つ1つ説明していくときりがありません。込み入ったことは追々覚えていくということで、概念的な部分をお話しします。とりあえず以下の画像で強調している、画面左下のアイコンに注目してください。

基本的にこの部分が上記画像のような見た目になっている前提で話します。これらの設定はキーボードの誤操作で容易に切り替わってしまう上に、操作上の見た目がかなり変化するので初心者のうちはパニックになりやすいです。なんか画面がおかしいな、と感じたら慌てずに左下を確認してください。変更したい場合はクリックすれば選択肢が現れます。

なお、以降で基本的にUIは英語版で進めます。というのも、作業に詰まって参考資料を探そうとしたときに英語のつづりやカタカナでなんと読みそうかを分かっていた方が便利だと筆者が考えているためです。筆者は英語が大変苦手ですが会話も制限時間もないので意外となんとかなります、頑張りましょう。以下の文章ではショートカットもいくつか紹介しますのでキーボード入力は半角にしてくださいね。
視野操作その1 画面の見方
さて、いろいろと並びたてる前にいくつか申し上げておきます。
- 飽きたら飛ばして次の項目に行ってください。真面目に全部読む必要はないです。気が向いたら振り返ってくれるとうれしいです。
- 取り返しのつかない操作はそうそうありません。数か所変なところをクリックしたりキーボード入力でミスした程度のことは気にしないでください、特に最初のうちは。
(操作を受け付けなくなったら[Esc]キーを押すか、いっそのことファイルを一旦閉じて開きなおしてしまうのも有効です) - 可能なら、是非実際に操作しながら読んでください。こういうのは手を動かしたほうが楽しいと思います。
特にこの「視野操作」という項目は3D空間の歩き方とも言える非常に直感的な要素です。最初はふわっと理解するのが大切だと考えています。
あと適当に何もないところを左クリックすると赤白の丸いカーソルが追いかけてきて奇妙に感じるかと思いますがとりあえず無視してください。後で説明します。(→セクション:3Dカーソル)

まずこの中心に表示されている3Dビューに注目します。

3DCGで作業する際は、メモリ上に仮想の3次元空間が作り出されます。空間内にはX・Y・Zと直交した3つの方向が存在し、それぞれの値の大きさで座標(x,y,z)が定義されます。
上記画像で赤く囲った部分はその中でも、Z軸方向の値が0のときのXY平面のマス目を記した領域です。実際にはもっと遥か外側に続いていますが、ここではX・Yとも-8~8までの範囲のみ表示されています。例えるなら平らな床に置いた方眼紙を斜め上から見ているような状況です。
この 斜め なのが肝要で、3Dビューというのは仮想3次元空間を覗き込んでディスプレイに表示するための窓のようなものです。空間上のXYZ軸はすべて直角に配置されていますが、斜めから見ているため傾いて見えるわけです。この現象を当たり前だと感じる方は数学と美術の才能があるので誇ってください。
窓からの視野を動かすにはマウスのスクロールボタンを使います。大きく分けて以下の操作ができます。
- 回り込み:スクロールボタンのドラッグ。視野がグルングルンと回転します。初期設定のまま何もいじっていないなら、中心の立方体の周辺を回り込むような挙動になるはずです。
- ズーム:スクロールボタンの回転。ズームイン・ズームアウトが起きます。
- 平行移動:キーボードのShiftキーを押しながらスクロールボタンのドラッグ。視野の向きをそのままにスライドします。
1~3の効果を窓に与える操作は他にもあり、[Shift+スクロール回転](縦方向限定の平行移動)や[ctrl+スクロールドラッグ](連続的なズームイン・ズームアウト)など色々と存在します。とりあえず飽きるまで適当にぐるぐるしてみましょう。
ちなみにこれらの操作によって画面の見え方が変化した後、「視界をリ元に戻せない…」となっても気にしないでください。blender側が操作を受け付けてさえいれば上記の3要素を組み合わせておおよそ似た視野の状態まで戻すことができます。
もし、「視界に何も映らない!大きく動かし過ぎた!?」という場合は[Shift+c]が便利です。このショートカットの効果は「3Dカーソルを座標(0,0,0)に移動しつつ、視野内に空間全体を表示」というものです。大体の場合「視野が勝手に動いて空間内の全オブジェクト(後で説明)を捕える」といった結果が得られます。視界リセットとはいきませんが、とりあえず状況を確認するのに便利です。
視野操作その2 設定変更と3面図表示
その1ではマウス入力を中心にした比較的柔軟な視野操作を紹介しました。しかしながら、もっとカチッとした再現性のある操作が必要になることも頻繁にあります。以下にそういった操作の手順を記載します。
繰り返しになりますが、飽きたり大体わかったという方は飛ばしてしまって結構です。逆によくわからない場合は実際にblenderを立ち上げて、キーを触りながら読んでみることをお勧めします。
さて、ここでは数字キーによるショートカットを使用しますがキーボードの種類によって少し事情が変わりますので確認します。
- テンキー(電卓みたいな配置の0~9キー)がついている場合はそちらでショートカットを入力することが可能
- テンキーがない場合は通常の数字キーで代替できるように設定を変更する。次の操作を行ってNumpadモードに移行
・ウィンドウ左上のFile>user preferencesを選択

・user preferencesウィンドウが開かれるので、以下の画像赤枠部分を操作

Save User Settingsを押すことで、blenderを落とした後も設定変更が継続されます。今後他の設定を変えた際にも忘れないようにしましょう。
以上で準備完了です。なお、テンキーありのキーボードを使っている方も、そちらが使いづらい場合には同様の設定変更は有効です。筆者は最近キーボードを変えてテンキーありになったのですが、すでに数字キー操作が癖になっているので引き続きこちらのNumpadモードで作業しています。
お待たせしました、ではショートカットを説明します。特に重要なのは”1,3,7,5,9″そして”0″です。
- 1 :視界が「X軸正方向からの眺め」になるよう回り込みます
- 3 :視界が「Y軸正方向からの眺め」に(略
- 7 :視界が「Z軸正方向(略
すなわち、互いに直交した3方向からの眺めをどれでもボタン1つで得ることができます。いわゆる3面図に表記される外観と言っていいです。
・ちなみに 仮想3D空間には地面や空が存在するわけではありませんが、筆者はblenderにおいてしばしばX軸正方向を「正面」、Y軸正方向を「左側面」、Z軸正方向を「上面」として扱っています。すなわち”1″を押すことで、空間と「正面から向かい合っている」状態になります。教材を読むときや他人と3Dデータをやり取りするとき、このあたりの認識をすり合わせておくとやりとりが多少スムーズになるかと思います。
- 5 :見え方が透視図法か平行図法かを切り替える…カメラで言えば画角の有無、お絵描きで言えばパースの有無を切り替える操作
- 9 :視界を180°ひっくり返す……「真後ろを向く」のではなく、視線の先にある点を中心にぐるっと回り込みます
- 0 :3D空間上の「アクティブなカメラ」オブジェクトに移動します。すでにカメラ視点になっている場合はカメラ視点になる直前の視野に戻ります。
・ちなみに2 ”1,3,7″はいずれもctrlキーと同時に押すことで単体押しとは逆の効果が得られ、各軸の負の方向からの眺めになります。また、上で触れなかった”2,4,6,8″は小刻みな視界の回り込みを行ってくれます。
3D空間にある「オブジェクト」と「レンダリング」
さてぐるぐると3D空間を見渡していただきました。ではそもそもこの視界に見えている物体は何なのかというお話をしていきます。


見え方が変わっていても画面にこれらが入っていれば話すことは変わりません。赤枠で囲った部分は「オブジェクト」と呼ばれる要素です。それでは説明します。
- カメラ:機能としては、3D空間内に作成したデータを撮影して画像ファイルにしてくれるオブジェクト。ということで現実空間にあるカメラとほぼ同じ役割です
- キューブ(メッシュオブジェクトの一種):立方体の形状をしたオブジェクトです。その場所に、カメラに映る物体として存在することになっています
- ランプ:仮想空間における光源の役割を果たします。これが存在しないと空間内は完全な真っ暗闇であるという設定です
はい、急に覚束ない表現を多用してしまいました。というのも、3DCGの編集はあくまで”仮想空間における作業なのだ”、という認識が非常に重要であると筆者は考えているため、このような表現になりました。3DCGの作業とは、この仮想空間内で各々の座標にて起きている現象をシミュレートし、その様子を観察することと言っていいと思います(もっと言えばその観察も「この方向から見たらどうなるか、というシミュレート」)。
その空間内に配置したオブジェクトとは、つまり「この位置にこういう形と機能を持った物体が存在すると仮定する」ということであり、シミュレーションの初期状態を設定することです。形状や明るさだけでなく重力・風・慣性・弾性なども設定する余地がありますし、座標やパラメータが時間の経過とともに変化していくという設定もありえます。突き詰めれば想像力とPCスペックの及ぶ範囲でなんだってできます(早口)。
ちなみに 上で言っている、「この仮想空間の様子を、この位置に置いたカメラで撮影したらどうなるかシミュレートする」という行為はレンダリング(Rendering)と呼ばれます。幸いBlenderはデフォルトでカメラ・キューブ(被写体)・ランプがありますので、早速実践してみたいという方は[F12]キーを押してみてください。
ファイルを開いてから特に何も操作していないなら、一瞬画面が黒くなった後灰色の空間に灰色の立方体が配置されている絵が表示されるはずです。これが3D空間のカメラが捉えている映像ということになります。キューブ・カメラ・ランプの位置や角度が変われば見える映像も変化します。
先の項でカメラ操作の[0]を試した方は、レンダリング結果と[0]の視界が似ていることに気が付くと思います。飽きたら[Esc]キーで元の3Dビュー画面に戻ってください。
3Dカーソル
話がそれました。さて、3Dビューの空間内を左クリックした際に赤白の丸がついてくるというお話をしました。これは3Dカーソルというものです。空間にピンを指して目印にしているような状態で、割とあらゆる場面で使います。
3Dカーソルはオブジェクトでこそありませんが座標データは持っています。確認するには[n]キーを押すか3Dビュー右上の”+”部分を押してプロパティシェルフを表示することで>3D Cursorの項を見てください。


3Dカーソルはオブジェクト位置を変更する際の目印になったりしますが、誤クリックなどで位置が変わってしまっても「ctrl+zの対象外」であるため即座に戻せません([ctrl+z]がわからない方には次項で説明)。そのためプロパティシェルフに数値を直接打ち込むか、[Shift+s]で開ける”Snap”の機能で色々と調節することをお勧めします。

3Dカーソルを初期位置に戻したい場合は[Shift+s >r(Cursor to Center)]が適当ですね。
3.オブジェクトの形状を変化させる-モデリング-
お待ちかねのモデリング要素です。とはいえ本記事では具体的な人体や建築物などの作り方は紹介しません。非常に基本的な操作方法について触れますので、ここは入門編だと思ってください。
- [ctrl+z]:Undo(戻る)
恐らく生涯使います。他のソフト(3DCGに限らず文書作成ソフトなど)でも同じ役割を持っていることが多く、「直前の操作を取り消す」という効果があります。
逆に[Shift+ctrl+z]でRedo(進む)という操作になります。Undoし過ぎたという場合に使いましょう。([ctrl+y]ではないので注意です)
- 選択・非選択
今更ながらオブジェクトの「選択」についてお話します。オブジェクトを「被選択状態にする」なんて言い方もしますね。選択されているオブジェクトは、基本的に輪郭や線の部分がオレンジ色になって自己主張をしています。3Dビュー上のオブジェクトにポインタを重ねて、マウスの右クリックによって選択ができます。ここ、左クリックではないことに注意してください。始めは違和感を覚えがちですがそのうち慣れます。

また、選択したいオブジェクトが複数あっても普通に右クリックのみ使用していると被選択オブジェクトが次々移り変わってしまいます。複数のオブジェクトを同時に選択したい場合は[Shift+右クリック]が簡単な方法です。この場合、最後に選択されたオブジェクト以外は若干赤い輪郭線で囲われた状態になります。
最後に選択されたオブジェクトは「アクティブになっている」などと表現されます。上の図では真ん中手前のキューブがアクティブですね
とはいえ、選びたいオブジェクトが大量に存在する場合は選択だけでも非常に大変な作業になります。そんな時に便利なショートカットがこれまた多数存在するわけなのですが、ここでは特によく使うABCキーについて紹介します。
- [a]:All。場に一つでも選択中の対象がいる場合には、それらすべての選択状態を解除。逆に一つも選択されていないときには選択可能な対象をすべて選択する
- [b]:Box又はBorder。左クリックからドラッグすることで矩形の当たり判定を作り、範囲内にあるすべての対象を選択する。右クリックで操作キャンセル
- [c]:Circle。ポインタの周りに円形の当たり判定を作り、左クリックドラッグで範囲内にある対称を逐次選択する。矩形選択と比べて柔軟な選択ができる。マウスのスクロールボタンを回すことで当たり判定のサイズを変更でき、右クリックでモード終了
筆者の力では文章で伝えきるのは難しいため、やはり是非とも実際の操作を伴って読んでいただきたいです。
- 移動・回転・拡大縮小
「動き」の要素である3つの操作について、汎用的なショートカットが存在しますのでそれ込みで紹介します。
- [g]:Grab。平行移動。選択した対象の向きを変えずに空間上を移動させる。
- [r]:Rotate。回転。こちらは位置を変えずに回転のみ。
- [s]:Resize。サイズ変更。同じく位置を変えずに大きさを変える。
3D空間を動くという行為について、これら3つを組み合わせて表現します。
さらにさらに、この動きの大きさについてはデジタルに直接数値を指定することが可能です。例えば[r]の後にキーボードで”45″と入力すれば斜め45°ピッタリに傾いてくれます。
操作内容を確定させるのは左クリック、キャンセルするのが右クリックです。
- 動きの拘束(軸方向指定)
さて、ここで同時に紹介したい機能があります。上記の[g][r][s]に加えて[x][y][z]を続けて押すことです。
- [g→x,y,z]:平行移動の方向を、x,y,z軸に沿った直線的な移動に限定する。
- [r→x,y,z]:回転軸をx,y,z軸と平行にする。
- [s→x,y,z]:変形方向をx,y,z軸方向に拘束する。
XYZを押さなければオブジェクトは3Dビュー上の視野の向きに沿って動きます。例えばRotateは、我々操作する人間の視線の向きが回転軸となります。
恐らく実際に操作してみるのが最もわかりやすいです。
ショートカットの説明が連発して混乱するかもしれませんが、手順をまとめると
1.右クリックやABCで動かしたいオブジェクトを選択する
2.GRSで動かし方の種類を指定する
3.(必要なら)XYZで動きの軸を指定する
4.確定は左クリック、キャンセルは右クリック
この4ステップを繰り返すことになります。
・ちなみに オブジェクトを選択すると、赤青緑の矢印が出現したはずです。これはマニピュレータといい、平行移動などをキーボードを使わずに実行することができます。

使い方は単純で、例えばX軸に沿って移動させたい場合はX軸の矢印を左クリックからドラッグします。一応数値を入力してカチッと動かすこともできますが、どちらかというと直線的な微調整に向いています。なぜかここは右クリックではありません。
マニピュレータの種類は回転用・拡大縮小用や軸方向の設定などができ、下画像の赤枠部分で設定ができます。

・ちなみに2 デフォルト設定では、マニピュレータが表示される位置はそのオブジェクトの中心(センター)とされる点です。オブジェクトを選択するとオレンジ色の丸が表示されるはずです。ここはオブジェクトが存在する際の基準といってよく、回転時の軸や拡大・縮小時の中心点となります。また、[b]や[c]によるオブジェクト選択時にはこのセンターの座標に触れないと選択状態になりません。
- Object ModeとEdit Mode
作業時の”モード”は切り替えが可能で、それぞれのモードでできることとできないことがあります。記事の冒頭で紹介したように3Dビュー画面の下に並んだボタンからモードを変更可能です。

画像を見るとわかるようにモードにはいろいろな種類がありますが、ここでは操作の肝であるObject ModeとEdit Modeを紹介します。
・Object Mode
blenderを起動した際にデフォルトで適用されているモードであり、ここまで作業していたモードにあたります。3Dビュー空間にある各オブジェクトを選択し、配置し、編集していきます。
・Edit Mode
オブジェクトの形状を編集するのに用います。いわゆる「モデリング」作業用のモードです。Object Modeで編集したいオブジェクトを選択した状態でこのモードに移行してください。
上記画像のボタン以外にも[Tab]キーを押すことでEdit Modeに入れます(もう一度押すとObject Modeに戻る)。
Edit Modeでも基本的な操作はObject Modeと変わらず、「選択」「GRS」「XYZ」「確定・キャンセル」を繰り返していきます。異なるのは、それを頂点や辺・面といった、オブジェクトを構成する要素に対して実行するといった点です。次の項でこれらに触れていきます。
メッシュオブジェクトの構成要素…頂点・辺・面
Edit Modeで確認できる、オブジェクトの形状を定義している個々の要素について触れていきます。とりあえずObject Modeでキューブを選んでEdit Modeに切り替えた場合について考えます。
- 頂点(vertex)
最小の単位であり「座標」しか持っていません。Object Modeの時と同様、右クリックで選択できます。複数選択したい場合は[Shift+右クリック]や、ABCを活用しましょう。死角にある頂点を選びたい場合は視野操作です。


- 辺(Edge)
連続した2頂点を指します。長さがあり、頂点同士が「接続されている」という情報を持っています。主観ですがCG関連書籍などでは、日本語の文書でもよく”エッジ”と呼ばれている気がします。

- 面(Face)
3個以上の頂点からなります。大きさと頂点同士の接続情報に加えて、「表・裏」の区別があります。また、レンダリングした際カメラに映るようになります。

例えばキューブは8つの頂点、12本の辺、6つの面から構成されています。そしてすべての面は辺によって囲まれ、すべての辺は両端を頂点として成り立っています。残念ながら空間を満たす体積のような要素はありませんが、煙や液体で空間が満たされているような演出は可能です(今回は触れませんがVolumeとかFluidシミュレーションと呼ばれる機能などで表現可能。)
さて、キューブだけでは印象が薄いかもしれませんが、この構成要素たちが細かく集合して並んでいると、縦横に線が交差しており織った布か網目のように見えないでしょうか。

こういった頂点・辺・面の塊(あるいはそれが面の1つしかなくても)を指して”メッシュ(mesh)”と呼びます。
オブジェクトの追加
キューブ以外にもいろいろな形状の物体を3D空間に召喚することが可能です。Object Modeで新規オブジェクトを追加する方法を紹介します。
[Shift+a]:Add。3Dカーソルの位置にオブジェクトを追加する機能です。とりあえずMeshの項目にあるものだけ触れます。

- Plate:平面
- Circle:円
- Cube:立方体
- UV Sphere:球体。極があります(UVは緯線・経線をなすU軸とV軸の意味と思われる)
- Ico Sphere:三角面からなる球体で極がありません。筆者はあまり使わないのでよくわかっていませんが、球面を均質に分割してくれているようです。デフォルトだとサッカーボールのような形状になります。
- Cylinder:円筒
- Cone:円錐
- Torus:ドーナツ状の形状
- Grid:初めからマス目の切った平面
- Monkey:猿の頭部です。通称スザンヌ。Blenderをやっているといろんなところで目にします。

・ちなみに Edit Modeで[Shift+a]を押すとオブジェクトは増えず、「同じオブジェクト内に」メッシュを追加することができます。
・ちなみに2 メッシュ直後に左側のTool Shelf下方に形状のパラメータが表示されます。ここを変更することで頂点の細かさや全体的なサイズや向きなど設定できます。

モデリング用ショートカット
Edit Modeで頂点の選択がObject Modeと同じ要領で行えたこと、選択した頂点にマニピュレータが現れたことなどからお察しの通り、頂点の移動もObject Modeの知見が使えます。
といいますか、Blenderの操作は実は色々な場面で共通です。したがって一つの項目でショートカットに慣れれば他の項目に応用できます。左右クリックabcgrsを駆使していきましょう。
さて、頂点の座標を変更するのも大切ですが、モデリングでは頂点や辺を新しく作り出すのも同じく大切です。手段は大量にありますので、使用頻度の高い機能を紹介します。
- [e]:Extrude。「押し出し」と呼ばれる操作です。頂点・エッジ・面どれでも使えます。特に面に対して使用すると自動で法線方向(面に垂直な方向)へのガイドを作ってくれます。

[e]を押した時点で新しい頂点や面の生成は完了しており、自動で押し出した要素の座標移動が始まります([g]を押したような状態)。したがって、[e]の後に右クリックするともともと選択していた頂点たちとぴったり同じ位置に新しい頂点が配置されます。これは結構うっかりで発生しやすいのですが、放置しておくとレンダリング時や頂点選択時に変な挙動になるのでご注意ください。

- [ctrl+r]:Roop cut。四角形の面を,その流れに沿って切断してくれます。試しにキューブに使うと紫色のガイド線がぐるっと一周するのがわかるかと思います。左クリックするとガイドに沿って実際に輪切り状の頂点群が生成され、今度は「どの位置で輪切りにするか」の設定が始まります。


使わない日はないってほどに使います。4角形の面のつながりを示してくれるので、簡易的にポリゴンの流れを確認するのにも便利です。便利機能として紫のガイドが出ているうちにマウスのスクロールを動かすことで輪切り回数も変更できます。

- [f]:Fill。面やエッジを作成する手段です。選択中の頂点を輪郭とした多角形の面を貼ってくれますが、”お互いがつながっていない2頂点”を選ぶとエッジのみ貼ってくれます。


このショートカットはとても賢く、選択の仕方によって自動で四角形を作って隙間を埋めていってくれます。逆に気が利きすぎて勝手な方向に面を貼っていくこともあるため、連打や押しっぱなしに注意しましょう。
以下に示すのはFill機能が勝手に調整してくれる場合の例です。


- [x or Delete]:Delete。選択中の要素を消去します。なお押した途端に効果のあるキーではなく、一度聞き返されます。Object Modeでは選んだオブジェクト全体が消えるかどうかを決定しますが、Edit Modeだと細かい調整が可能です。


他にもあるけど今回は省略します
- [Alt+m]:Merge。複数の頂点を結合させる機能です。その際にどの座標にまとめるのかを選ぶことができます。と言っても別に適当な場所でまとめてから頂点を移動させても変わらないので詳しくは説明しません。作業のスピードアップを図りたい方は使い分けを習得して下さい。

一気に紹介しました。ここまでの操作があればポリゴン数の少ない形状は大体作れます。以下に紹介する機能は面倒な作業を簡略化してくれる便利機能です。
- [Shift+d]:Duplicate。複製を作ります。Extrudeと同様[Shift+d]を押した時点で新しい頂点群が生成され即時移動モードに移ります。
- ちなみにObject Modeでも使えます。ビルや木々やモブをお手軽に増殖させられるので非常に便利です。
- Smooth Vertex:ショートカットではありません。3Dビューの枠外、左側のTool Shelfから使用でき、選択中の頂点群を滑らかな配置にしてくれます。
- 逆にRondomizeを使うとガタガタにできます。地面や体毛なんかの描写にはこちらを使うことがあります。
- Proportional Edit:ショートカットとしては[o]や[Alt+o]が存在します。使ってみると視覚的にわかりますがざっくり文章で説明すると「選択してない頂点も選択した頂点の移動に引っ張られて一緒に動く機能」です。



Proportional Editモードでの編集時、編集対象の頂点などの周りに白い丸が現れます。これがProportional Editの効果範囲です。Circle選択の当たり判定同様、この丸もスクロールボタンを回すことでサイズを変えられます。
Smooth VertexやProportional Editは頂点数が増えてからの方が使用機会が増えると思うので最初から無理に使うことはありません。後々複雑な形状を作る際、大量の頂点を一つ一つ操作するのが煩わしいと感じたら思い出してください。
まとめると、
- 頂点などの要素を増やす:[e], [ctrl+r], [f], [Shift+d]
- 頂点などの要素を減らす:[x], [Alt+m]
という感じです。あとはひたすら左右クリックabcgrsです。そして作業性を上げるためにスクロールと137でカメラを適宜操作していきましょう。
そして1つ注意点として、Edit Modeでの編集時にはオブジェクトの中心が動きません。したがってあれやこれやと作業してからtabキーを押してObject Modeに戻ると、センターマークがメッシュの外に出てしまっていることがあります。狙ってやっている場合はいいですが、行方不明にならないよう気を付けてください。(→オブジェクトの中心)
Modifier
ここまでで、モデリングに必要な 頂点・エッジ・面の編集について、その座標を変える方法、また量を盛ったり削ったりする方法について触れました。
基本的に手作業ですが、折角デジタルですのでイラストソフトのように自動化できるところはどんどん使っていくと作業の短縮になります。BlenderではModifier(Mod)という名前で便利機能がまとめられており、特によく使うものを紹介します。

- Mirror:鏡面化。左右対称な形状を作る場合に片側だけ作れば完成になります。なお、左右だけでなく前後と上下にも対応しています。なお反転時の境界面はそのオブジェクトのセンターを通過します。
Clippingにチェックを付けると境界面を飛び出さなくなります。ただし同時に、境界面にスナップされて離れられなくなってしまうことがよくあります。その場合は焦らずClippingのチェックを一時的に外して操作を再開しましょう。
- Subdividion Surface:細分化。現在のメッシュを自動で分割し頂点数を増やすと同時に形状を丸めて滑らかにします。形状の大枠(変形が集中しているところ)をサッとモデリングしてから一気に情報量を増やせるため大変重宝します。
- Bevel:面取り。全てのエッジを一括で「角」として落とします。地味ですが、レンダリングした時の存在感を増すのに効果があります。特に直線的な造形(機械工作品など)に効果が大きいです。
逆に滑らかな形状にかけると角が際立ってしまうためあまり向きません。
- Solidify:厚み付け。面に一括で厚みを生じさせます。例えば衣服やリボン状の形状を作る際、とりあえず表面を作ってしまってからこのModを使えば裏面が自動で作成されるという寸法です。ただし融通が利かないので、増えた厚みが折りたたまれた部分で貫通したりします。



よく使うのはこんなところです。少ない手数で劇的にモデルの見た目がよくなることも多いので、是非とも活用してください。
もちろん他のModも有用なものばかりです。次回以降で触れられればと思いますが興味が出た方は自主的に調べてみてください。だんだん魔法を習得しているような気分になってきます。
具体例
ここまでの知識を使って見覚えのある機体をざっくり作ってレンダリングしてみました。
中心の球状部分、両脇のアーム、そしてプレートは別オブジェクトとして作成しているため、それぞれ異なるModを入れることができます。



3パーツとも球や円筒やトーラス、6角形などの幾何学的で単純な形状形状の組み合わせでできているので、操作方法とModの性質が理解できれば簡単にモデリングできます。
そんな都合もあり、特に作りたいものが浮かばないがとりあえず練習したいという場合には[Shift+a]で追加できる基本形状で作れるような工業製品を中心に始めてみるのをお勧めします。
まとめ
ここまでお付き合いありがとうございました。具体的なモチーフの作り方についてはあまりお話しできませんでしたが、代わりになるべく一般化した説明を記したつもりです。辞書的な使い方をしていただければ幸いに思います。
説明過剰な部分も逆に言葉足らずな部分もあったかと思いますが、Blenderをやってみたくても何から手を付ければいいか迷っている方が一歩目を踏み出すきっかけとなることを祈っています。
もし質問事項や、成果物・作業進捗について教えていただけるという方がいらっしゃいましたら、メールフォーム以外にも当サイトが運営している公式Twitterアカウントまでご連絡いただけると筆者がとても喜びます。
Crazive7(クレナナ) 公式アカウント:@Crazive7
リプライ以外にもハッシュタグで #crazive7とつけていただければひっそりと見に行きます。もしBlenderのモデリングを上達させたい・創作を通じて交流したいという方は是非とも積極的に当サイトを利用もとい活用していってください。
ここまでお読みくださりありがとうございました。